トップ «前の日記(2005-10-12) 最新 次の日記(2005-10-18)» 編集

Rogue Engineer's Diary / やさぐれ日記

Categories | CPUの創りかた | Modern Compiler Implementation in ML | NerdTV | PDP-11シミュレータで古代のUNIXを動かしてみる | The Yakumo Project | やさぐれ読書録
最近のツッコミ:1.bag781(2009-06-26 12:58)  2.Rhett Trappman(2009-06-22 09:26)  3.Rhett Trappman(2009-06-22 09:24)
最近のトラックバック:1.濃縮還元オレンジニュース:プロ.. (2006-12-22 22:02)

2004|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|09|

2005-10-16

[NerdTV] Dave Winter: 混沌から生まれたRSS

NerdTVの第六話はDave Winterへのインタビュー。RSSの生みの親として 知られる人物である。以下、インタビューの44分45秒のあたり、RSSの誕生にまつわるお話から:

Bob: (RSSは)どのようにして生まれたのですか?

Dave: RSSが誕生したのはですね、ええと、あれはある意味偶然の産物みたいなものです。我々にはこれが必要だ -- といったビジョンの元にRSSが生まれたわけではありません。少なくとも最初のうちはそうでした。簡単に説明すると、MicrosoftにAdam Bosworthという人物がいて -- ちなみに彼は今はMicrosoftにはいないのですが -- 彼が何かと言うと私のところに聞きに来たんです。Adamとはかなり昔からの知り合いです。私と同じような、灰色のひげをたくわえた感じのベテランと言ってよいでしょう。実際には彼はひげを生やしてはいません けどもね。ともかく、シリコンバレーの技術者の元祖の一人と言えます。

彼はデータベースの仕事をしていました。確か彼のやっていたデータベースはANSAと言う名前で、それをBorlandに売り、そ の後 Borlandでスプレッドシート、その後にMicrosoftでデータベースをやりました。Accessは彼の仕事だったかな。

Bob: ええ。

Dave: そう、Accessは確か彼の仕事のはずです。その後彼はMicrosoftでXMLの専門家になりました。で、彼は -- 有能なエバンジェリストでもあります。つまり、彼はある技術がどのようにして動くか、その仕組みを良く分かっているということです。これと決めたら -- 決してノーとは言わない、自分の求めるものは何かをきちんと心に描いて、それに向かって一心に進んでいく。そして決してあきらめない。で、彼は、私が XMLをやるべきだ、というか、自分がXMLの仕事をするには私が必要だと思ったようです。ということで彼は私のところまでやってきました。私はそのとき Woodsideに住んでいたんですが、彼はそこへ訪ねてきたんです。Microsoftではかなり上のほうにいる人物です。もちろん、私は彼に会ったこ ともあるし、知り合いだし、好きな人物でもある。彼は素晴らしいソフトウェアデザイナーであり、自分の手がけているソフトウェアについて良く理解している 人物と会うのが楽し いという人物です。

でもその場で私は「うーん、その話には乗れないなぁ」と答えました。彼に対して、これは大きな会社が手を出して、最終的には台無し に なってしまうタイプの仕事だと言ったんです。先ほどの話でも出ましたが、本棚一杯に埋まった仕様書を作って、そのままダメになって終わり、と。

「そうか、じゃぁまた来るよ」と言って彼は帰ったんですが、しばらくするとまたやって来る。私は同じことを言って「その仕事はやら ない よ」と断る。それを三回繰り返したんですが、四回目になってついに、「わかった。やってみることにしよう」と言ったんです。

Bob: 彼は四度あなたの元に来たんですか?

Dave: ええ、四度やってきました。それで --

Bob: 彼があなたをそこまで必要としたのはなぜでしょう?

Dave: なぜか、ですか?

Bob: ええ。

Dave: 分かりません。彼 -- ええと、 -- 彼が私にいったことは覚えていますが、それが答えなのかはちょっと分かりません。彼は直感的に、XMLとアウトライン文書は技術的に非常に似ていると思 い、私がアウトライン文書技術の専門家として有名だったからやって来た、と言っていました。

Bob: なるほど。

Dave: 理由としては私がコンピュータの業界でアウトライン文書技術の専門家として知られていたこと、それと -- 私がXMLに対して何かできるんじゃないかと直感していた、といったあたりでしょうか。確かにその点で彼は当たっていたと思います。どうでしょう?

Bob: そうですね。

Dave: その後、私はXML化できそうなものを探してまわりました。手元にあるデータのうち、使えそうなものを探したんです -- というのも、それこそがXMLの土台となるアイディアだと思ったからです。XMLというのはファイルフォーマットを生成するための手段です。あまり派手な ものではない。とってもシンプルですよね。

Bob: はい。

Dave: だから - いろいろな人がXMLについて語っていたんですが - 彼らが何を言っているのかが理解できませんでした。どうもXMLがプログラミング言語であるかのような話をしている。

Bob: ええ。

Dave: でもXMLはプログラミング言語ではない。ファイルというか -- ファイルフォーマットを生成するための手段である。当時私はそういう風に考えていましたし、現在もその考えは変わっていません。そして最終的には、そのよ うな結論に落ち着くものと思っています。ということで、私はWebサイトで変更のあったページすべてを追跡するための仕組みを作りました。実際には Googleが現在そのようなことをやっていますがね。それが1997年のことです。良いアイディアだったのですが、しばらくして手を引いてしまいました。あまり 熱心にやるつもりがなかった。

その後にScripting News Formatというものをやりました。これは、私のblogであるScripting News、www.scripting.comをXML化するというものです。私が毎日Scripting Newsに記事を載せると、HTMLバージョンに加えて、XMLバージョンも生成されていきます。そこで思ったのが「これならばニワトリ(アプリケーショ ン)が先か、卵(データ)が先か、という問題を気にする必要はないな、よし、このフォーマットを公開して、広く使ってもらえるようにしてみよう。『これを 使ってアプリケーションを作りたい人は誰でも自由にやってみていいよ』と言ってやろう」ということでした。

しかしあまり盛り上がりませんでした - それが1997年の終わりごろのことです。1998年になって、コンテンツマネジメントをやっている会社、Vignetteがいくつかの 実験を やったり、オープンソースの開発者がいくらか開発をやったりという状態になりましたが、あまり大した進展はありませんでした。そして1999年の初めに なっ て、Netscapeの人たちからメールを受け取るようになったのです。彼らはかなりエキサイトしており、自分たちのやっていることを私に見せてくれましたが、何 をやっているのか私には理解できませんでした。でも彼らがScripting Newsを読んでいる、ということは確かに分かりました。彼らが仮想新聞と呼ぶものを作ろうとしている、ということも理解しました。

仮想新聞と言うのは一種の -- 説明が難しいのですが、彼らはコンピュータの画面を新聞ととらえて、画面の中を複数の区画に区切った後、情報を、その区切られた区画に割り当てていく、と 言うことを考えていました。で、彼らはScripting Newsのフォーマットをそこに使おうとしている、と私は思ったわけです。私が見た限りでは、そのような状況に見えました。ところが彼らは実際には、車輪 の再発明をやっていたのです。彼らが出してきたのは私のものとはまったく、完璧に互換性のないフォーマットでした。

それに気がついたときには、彼らがやったことに対してえらく腹が立ちました。一番最初にがんばっていろいろと作ったのにもかかわら ず、二番手の人間が全然別の方法でやってしまう。結局のところ、標準を作る力を得るのは最初にやった人間ではなく、二番手の人間である。 これはとても大きな発見だったと思います。最初にやった人間は、自分の作ったものが世の中に認められるかどうか、手をこまねいて見ているしかない。

という状況で、私の姿勢もそんな感じにならざるを得ない。もはやどうしようもなかったのですが、最終的には突破口が見つかること になりました。彼らのフォーマットを受け入れ、自分の持っていたフォーマットは過去のものとするいう選択です。簡単に言うと、まず最初に彼らのフォーマッ トにあった機 能のうち、自分のところにはなかったものを全て取り込む、ということをやりました。

Bob: ふむ。

Dave: そして私はScripting Newsのバージョン2.0を出したわけです。これはNetscapeの連中に対する牽制球(a shot across their bow)みたいなものでした。それと同時に私は「あなた方のフォーマットであるRSSは、私の作ったサイトの全てにおいてサポートしますよ」と宣言して、 MyUserLand.comというアグリゲータを作りました。現在あちこちに存在するアグリゲータの元祖とも言えるものです。

彼らのやっていたのはMyYahoo!の先祖のような感じのものでしたが、現在ではMyYahoo!の方も、もう一方のモデル、つ まり アグリゲーターの方にシフトしてきています。そちらのほうが有効であるためです。彼らは私の投げた牽制球に気づき、Netscapeの社内で何か話し合っ たようです。そして私の努力に答えてくれました。彼らはオリジナルのRSSに対してScripting Newsフォーマットにあった全ての機能を追加し、RSS 0.91としてリリースしたのです。これは私が彼らに望んでいたことそのものでした。この時点で私は「Scripting Newsフォーマットは廃止し、RSS 0.91を全面的に採用する」と宣言しました。以後はRSS 0.91一本で行くと。

ということで、今度は私が二番手の座に座ることになったのです。私はNetscapeが出してきたものを承認する立場となり、 それが標準となった、というわけです。

(NerdTV #6: Dave Winter by Robert X. Cringely and PBS福 盛秀雄訳)

といった具合に、RSSの誕生のいきさつというのはやや混沌としているのだが、その後のRSS Version1.0から2.0にかけての展開も実は上の話に劣らずかなりややこしい。興味のある方はとりあえず

あたりを見てもらうと良いだろう。


本エントリの内容はクリエイ ティブ・コモンズ・ライセンスの下に公開されています

Name / お名前:
E-mail:
Comment / コメント
(To English posters: please do not remove the extra characters in the comment area):
本日のTrackBacks(全1件) [TrackBack URL: http://fukumori.org/diary/tb.rb/20051016]
# OPC Diary:Nerd TV Dave Winter (2005-10-16 22:49)

Rogue Engineer's Diary / やさぐれ日記(2005-10-...

本日のリンク元


福盛秀雄/Hideo Fukumori

Visitors Count: 264(yesterday) / 84(today) / 338918(total)